有形固定資産回転率とは
有形固定資産回転率とは何かを説明します。
定義:有形固定資産を活用した売上効率を示す指標
有形固定資産回転率とは、企業が所有する有形固定資産をどの程度効率的に活用し、売上を生み出しているかを示す経営指標です。「回転率」が高いほど、少ない資産で多くの売上をあげていることになり、資産を効率的に活用できていると判断できます。反対に、回転率が低い場合は、資産が過剰であるか、十分に活用できていない可能性が考えられます。
有形固定資産(この指標で用いる有形固定資産)は、建物、機械装置、車両運搬具、工具・器具・備品などの事業用資産が中心です(※統計や定義により範囲は異なります)。
これらの資産は企業の生産活動や事業運営に不可欠ですが、適切に管理・活用されなければ、維持コストばかりがかかる「遊休資産」となりかねません。そのため、定期的にこの指標を確認し、資産活用の効率性を見直すことが重要です。分析する際は、同業他社の数値や過去の自社の数値と比較することで、より正確な現状把握が可能になります。
計算式と具体例
有形固定資産回転率は、以下の計算式で算出します。単位は「回」で表されます。
有形固定資産回転率(回) = 売上高 ÷ 有形固定資産(期首・期末平均)
例えば、ある企業の年間の売上高が10億円で、期首と期末の有形固定資産の平均額が2億円だったとします。この場合の計算は以下のようになります。
10億円(売上高) ÷ 2億円(有形固定資産) = 5回
この結果は、有形固定資産の金額に対して5倍の売上高を生み出したことを意味します。この数値自体に絶対的な基準はありませんが、業種ごとの平均値や過去の推移と比較することで、自社の資産効率を客観的に評価できます。
有形固定資産回転率の業種別目安・平均値
有形固定資産回転率は、業種によって大きく異なります。例えば、大規模な工場や設備が必要な製造業では有形固定資産が大きくなるため回転率は低くなる傾向にあります。一方、比較的多額の設備投資を必要としない卸売業では回転率が高くなる傾向があります。サービス業については業種の幅が広く、回転率は業態によって差が見られます。
自社の数値を評価する際は、自社が属する業界の平均値と比較することが重要です。以下に、公的統計調査などを参考にした業種別の目安をまとめました。
| 業種 | 平均回転率(回)の目安 |
|---|---|
| 製造業 | 約4〜4.5回 |
| 建設業 | 約5〜6回 |
| 情報通信業 | 約3.5〜4.5回 |
| 運輸業・郵便業 | 約1〜2回 |
| 卸売業 | 約11〜12回 |
| 小売業 | 約5〜6回 |
| 不動産業・物品賃貸業 | 約0.5〜1回 |
| サービス業 | 約2.5〜3.5回 |
※上記の数値はあくまで一般的な目安です。企業の規模や事業内容によって異なります。
自社の回転率が業界平均と大きく乖離している場合は、その原因を探る必要があります。また、単年だけでなく、過去数年間の推移を見ることで、資産の活用効率が改善傾向にあるのか、あるいは悪化しているのかを把握することも大切です。
有形固定資産回転率が低い原因と対処法
有形固定資産回転率が低い場合、資産が売上にうまく貢献していない状態と考えられます。その原因は複数考えられますが、主な対処法としては「遊休資産の整理」「設備の稼働率向上」「管理精度の向上」などが挙げられます。
遊休資産の整理・処分
回転率が低い原因として、まず考えられるのが「遊休資産」の存在です。これは、事業に使用されておらず、将来的に使用する見込みもないのに保有し続けている建物や機械設備、備品などを指します。
これらの資産は、売上を生み出さない一方で、固定資産税や維持管理費といったコストだけが発生します。不要な資産は売却や除却を検討し、財務状況を改善させましょう。資産を整理することで、有形固定資産の総額が減少し、結果として回転率の向上につながります。
設備の稼働率向上と売上拡大
保有している設備や機械が十分に稼働していない場合も、回転率は低くなります。生産計画を見直したり、新規の受注を獲得したりすることで設備の稼働率を高め、売上を増やす努力が必要です。
また、既存事業の売上を伸ばすことも直接的な解決策となります。マーケティング戦略や販売チャネルを見直し、売上高そのものを増加させれば、計算式の分子が大きくなるため有形固定資産回転率は改善します。資産の効率化と売上拡大の両面からアプローチすることが重要です。
固定資産管理の精度向上(システム活用)
「帳簿上は資産として計上されているが、現物がどこにあるかわからない」「すでに廃棄したはずの資産が台帳に残り続けている」といった管理不備も、回転率を不当に低くする原因となります。
特に、Excelや紙の台帳による手作業での管理では、情報の更新漏れや現物との不一致が起こりがちです。遊休資産を正確に把握し、適切な処分を行うためには、管理体制そのものを見直す必要があります。
固定資産管理システムを導入すれば、資産情報の正確な一元管理が可能です。バーコードやICタグを活用して現物確認を効率化し、遊休資産や廃棄すべき資産を可視化できます。正確な資産管理は、経営判断の質を高め、資産効率の改善に直結します。
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有形固定資産回転率と設備投資効率の関係
ここまで解説してきたとおり、有形固定資産回転率が高いほど、設備を有効活用できていることを意味します。しかし、有形固定資産回転率には難点があります。計算式には「売上高」を用いますが、売上高が高くなっている要因が有形固定資産にあるとは限らないことです。まったく別の原因で売上高が高くなっているだけであり、設備は有効活用できていない可能性があります。
そこで、設備がどの程度の付加価値を生み出しているかに着眼した、設備投資効率という指標も利用されます。計算式は以下のとおりです。
設備投資効率(%) = 営業利益(円) / 有形固定資産額(円) × 100
上記の計算式における営業利益とは、売上高から売上原価・販管費を除いた値です。設備投資によって生み出した付加価値の金額を意味します。
有形固定資産回転率の目安や計算から企業の状態を知ろう
有形固定資産回転率とは、企業が有形固定資産を有効活用できているかどうかを表す指標の1つです。数値が大きいほど活用効率が高いことを意味します。
有形固定資産回転率の一般的な数値は、業種によって異なります。自社が属する業種の平均値や、自社における過去の値と比較することで、経営の軌道修正に役立てられます。現状を把握し、健全な財務状況を実現する参考にしましょう。



