製造業DXの推進状況
総務省が2021年に発表した「情報通信白書」によると、製造業の約6割の企業が「DXを実施していない、今後も予定なし」と回答しています。ほかの産業と比較してDX推進が遅れている要因として、技術や経験を重視する企業文化や、デジタル化に対する抵抗感が挙げられます。
参考:令和3年版 情報通信白書 我が国におけるデジタル化の取組状況|総務省
製造業DXとは
製造業DXとは、最新のデジタル技術を活用し、生産性や効率を向上させる取り組みを指します。例えば、以下のような技術が活用されています。
- ●IoTセンサーによるリアルタイムデータ収集
- ●AIを活用した生産管理システム
- ●クラウドベースの業務システム導入
製造業DXにより、生産性の向上やコスト削減、品質管理の強化が期待できます。
製造業DXの必要性やメリット、具体的な導入ステップや事例は以下の記事で解説しています。製造業でのDX事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
製造業DXが進まない理由
製造業におけるDX推進を阻む要因は多岐にわたります。ここでは、特に大きな課題となる5つの理由と、具体的な解決策を紹介します。
経営層の理解不足
DX推進には、経営層の積極的な関与が不可欠です。しかし、多くの企業では経営層がDXの必要性やメリットを十分に理解していないため、投資に対する意欲が低い傾向があるといえます。
- 【解決策】
- ■経営層向けのDX研修を実施する
他社のDX成功事例を社内勉強会で共有したり、DXの基本概念や最新トレンドを学ぶワークショップを開催したりして、経営層の意識改革を促す。 - ■DXのROI(投資対効果)を具体的な数値で示す
生産性向上率やコスト削減額をKPIとして算出し、初期投資と運用コストのバランスを分析した資料を作成する。具体的なデータにもとづいた投資効果を提示することで、経営層の理解を深める。 - ■DX推進に向けた長期的な戦略ビジョンを策定する
DXロードマップを作成し、フェーズごとに目標を設定する。また、各部門との連携を強化し、継続的な進捗評価を行うことで、組織全体でDXを推進する体制を構築。
- ■経営層向けのDX研修を実施する
現場の抵抗感
製造現場では、長年培ってきた従来の業務プロセスが根強く残っており、新しい技術やシステムの導入に対して抵抗感が生まれやすい傾向があります。
- 【解決策】
- ■DX導入のメリットを現場に分かりやすく伝え、成功事例を共有する
現場目線での導入効果(作業効率の向上や負担軽減)を具体的に示し、現場スタッフの意見を反映した導入計画を作成する。 - ■現場の意見を取り入れた段階的な導入プロセスを構築する
まずは小規模なプロジェクトからスタートし、徐々に範囲を拡大する。また、試験運用期間を設け、フィードバックをもとに改善を重ねることで、現場の不安を解消する。 - ■DX推進のためのワークショップやトレーニングを実施する
実際の業務フローにあわせた操作研修を実施し、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を導入して現場への定着を促します。
- ■DX導入のメリットを現場に分かりやすく伝え、成功事例を共有する
IT人材の不足
DXを推進するには、デジタル技術に精通した人材が不可欠です。しかし、製造業ではIT人材の確保が大きな課題となっています。
- 【解決策】
- ■社内の既存人材をDXに対応できるよう育成する
DX関連のオンライン講座や外部セミナーに社員を参加させたり、社内ハッカソンを開催したりして、スキル習得の機会を提供する。 - ■外部のIT専門家やコンサルタントを活用する
DX導入の専門企業とのパートナーシップ構築や、フリーランスの専門家を短期契約で雇用するなど、専門知識やノウハウを積極的に取り入れる。 - ■DX推進に向けた専門チームを編成し、組織的に取り組む
IT部門と現場部門が連携したプロジェクトチームを設立し、プロジェクト管理ツールを活用して進捗を可視化する。
- ■社内の既存人材をDXに対応できるよう育成する
既存システムとの統合の難しさ
古いレガシーシステムが稼働している製造業では、新しいデジタルツールとの連携が難しく、DX推進の足かせとなることがあります。
- 【解決策】
- ■段階的なシステム移行計画を立案し、スモールスタートを推奨する
まずは重要度の低いシステムから置き換えを実施し、既存システムとの並行運用を試みながら段階的に移行する。 - ■クラウド技術やAPIを活用し、既存システムとの連携を図る
APIゲートウェイを導入し、異なるシステム間のデータ連携をスムーズにする。また、クラウドサービスの活用により柔軟性を高める。 - ■ITベンダーと協力し、柔軟なシステム統合を実現する
システムインテグレーターと連携し、最適なソリューションを選定する。カスタム開発とパッケージ導入の両方を視野に入れることで、柔軟なシステム統合を目指す。
- ■段階的なシステム移行計画を立案し、スモールスタートを推奨する
投資コストの問題
DX推進には一定の投資が必要ですが、費用対効果が不明瞭なため、経営層が投資を躊躇するケースが多く見られます。
- 【解決策】
- ■DX導入の短期・中期・長期的な効果を明確化する
具体的なコスト削減事例や売上向上効果を提示し、定量的なデータを用いた評価レポートを作成する。 - ■資金調達の選択肢として補助金や助成金を活用する
国や地方自治体の補助金・助成金制度を活用することで、DX推進の初期投資負担を軽減する。 - ■コスト最適化を考慮したDXツールを選定する
サブスクリプション型のツールやオープンソースソフトウェアを活用し、継続的なコストを抑えながらDXを推進する。
- ■DX導入の短期・中期・長期的な効果を明確化する
製造業DXに関連する記事をまとめて以下からご覧いただけます。製造業に適した各種システム比較記事など、ぜひ確認ください。
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DXが進まない状態を放置するリスク
DXの停滞は、現状維持を意味するわけではありません。むしろ、変化の激しい現代においては、事業継続を脅かす大きなリスクとなり得ます。
国際競争力の低下とビジネス機会の損失
海外の競合企業がDXによって生産性を向上させ、新たなサービスを展開するなか、自社だけが旧来のやり方を続けていれば、価格や品質、納期の面で競争力を失うおそれがあります。また、顧客ニーズの変化に迅速に対応できず、新たなビジネスチャンスを逃すことにもつながります。
技術継承の断絶と人手不足の深刻化
熟練技術者の持つノウハウや勘は、企業の貴重な財産です。しかし、それらが個人のなかに留まったままであれば、退職とともに失われてしまいます。DXによって業務プロセスをデータ化・標準化しなければ、技術の継承は進みません。人手不足が深刻化するなか、属人化した業務は事業継続のリスクをさらに高めます。
製造業DXを進めるためのステップ
DXが進まない理由やリスクを理解したうえで、次は何をすべきでしょうか。ここでは、停滞した状況を打破し、DXを軌道に乗せるための具体的な4つのステップを紹介します。
ステップ1:現状把握とビジョンの明確化
まずは自社の現状を客観的に把握することから始めます。どの業務に課題があるのか、どこに非効率が生じているのかを洗い出しましょう。そのうえで、「生産性を10%向上させる」「不良品率を5%削減する」といった、DXによって実現したい具体的な目標(KGI/KPI)を設定し、経営層と現場で共有することが重要です。
ステップ2:スモールスタートでの成功体験づくり
最初から全社規模で大規模な変革を目指すのは現実的ではありません。まずは特定の部門や工程に絞って小規模なプロジェクト(スモールスタート)から着手しましょう。小さな成功体験を積み重ねることで、現場の抵抗感を和らげ、DXへの協力的な雰囲気をつくることができます。また、トライアルを通じて得られた知見は、本格展開する際の貴重なデータとなります。
ステップ3:デジタル人材の確保・育成または外部連携
社内にIT専門家がいない場合は、外部の専門家やITベンダーと連携するのも有効な手段です。専門家の知見を借りることで、自社に合ったツールの選定や導入計画をスムーズに進められます。並行して、従業員向けの研修を実施するなど、長期的な視点で社内のデジタル人材育成にも取り組みましょう。
ステップ4:全社的な展開とデータ活用スモールスタートで得た成果とノウハウをもとに、対象範囲を徐々に広げていきます。部門間でシステムを連携させ、収集したデータを分析・活用することで、より高度な業務改善や新たな価値創造につなげることが可能になります。この段階では、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善していく姿勢が求められます。
まとめ
製造業におけるDX推進は、人材不足や予算、社内理解不足など多くの課題に直面します。しかし、適切な戦略と段階的なアプローチによって、これらの課題を克服できます。まずは自社の課題を明確にし、実行可能なDX戦略を策定しましょう。
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