BCP発動の条件とは
BCPの発動とは、実際に災害に直面した際、BCP対策を実行に移すことです。自社の事業への影響を最小限に抑え、速やかな復旧を目指します。適切なBCP発動において鍵となるのが発動基準です。いざというときに尻込みしないように、どのような状況に陥ったらBCPを発動するのか明確な基準が求められます。
BCP(事業継続計画)の発動基準と判断の考え方
BCPの発動基準は、企業の事業内容や拠点所在地、業務の特性などによって異なります。ここでは、中小企業庁などが示す考え方をもとに、災害種別ごとの一般的な発動基準例を紹介します。
中小企業庁などのガイドライン基準
BCPの発動基準を策定する際は、中小企業庁が公開している「中小企業BCP策定運用指針」などが参考になります。この指針では、発動基準を「緊急事態発生の判断基準」と「BCP発動の判断基準」の2段階で整理することを推奨しています。
まず異常事態の発生を検知し、その影響が事業継続に重大な支障を及ぼすかを評価したうえで、BCP発動を決定します。判断に迷う場合は、「空振りは許容するが、見逃しは許されない」という考え方のもと、安全を優先して発動することが原則です。
自然災害(地震・水害)の基準例
地震や水害などの自然災害では、気象庁や自治体が発表する公的な情報と、自社の被害状況を組み合わせて判断することが重要です。特に、従業員の安全確保や事業所の被害状況を重視して発動基準を設定します。
| 災害種別 | 発動基準の例 |
|---|---|
| 地震 | ・事業所所在地で震度5強以上を観測 ・従業員の半数以上が出社困難 |
| 水害 | ・警戒レベル4(避難指示)以上が発令 ・事業所が浸水 |
IT災害(サイバー攻撃・システム障害)の基準例
IT災害は、外見上の被害が分かりにくい一方で、事業に深刻な影響を及ぼすリスクがあります。特に、基幹システムや顧客向けサービスの停止は、迅速なBCP発動が求められます。
| 災害種別 | 発動基準の例 |
|---|---|
| サイバー攻撃 | ・ランサムウェア感染によるデータ暗号化 ・DDoS攻撃によるサービス停止 |
| システム障害 | ・基幹システムが2時間以上停止 ・全社的なシステム利用不可 |
感染症・パンデミックの基準例
感染症の拡大は、従業員の出勤制限や業務停止を引き起こし、事業継続に大きな影響を与えます。政府や自治体の発表をトリガーとし、従業員の安全確保と事業継続の両立を図るための基準を設けておくことが重要です。
| 災害種別 | 発動基準の例 |
|---|---|
| 感染症 | ・緊急事態宣言の発令 ・従業員感染率が10%を超過 |
以下の記事では、BCPについて詳しく解説しています。
BCPの発動フロー(初期対応)
ここでは災害発生時に求められるBCP対応の流れについて、初動から事業復旧までを解説します。迅速かつ的確な対応により、被害の拡大を防ぎ、事業の継続性を確保します。
1.緊急事態対策本部を設置する
BCPを適切に発動・運用するには、平時から明確なBCP体制を整備しておくことが重要です。緊急時には、事前に決めた体制のもとで速やかに緊急事態対策本部を設置し、役割分担と情報共有を徹底しましょう。BCP発動後24時間以内に本部を立ち上げ、以下のグループで対応を行います。
- ■緊急対策本部
- ■事務局
- ■情報収集チーム
- ■広報チーム
設置場所は基本的に本社ビルなどを使いますが、その場所が使えなくなった場合を想定し、複数の場所を決めておきましょう。
2.被害状況の確認をする
二次災害を防ぐために、事業所からの撤退や負傷者への応急手当、火災であれば初期消火などを行います。また、就業時間外にBCPを発動した場合は、出社可能な従業員を招集します。従業員が自主的に参集できる基準を設けておくのが理想的です。
続いて、以下について被害状況を確認しましょう。
- ■事業所内外
- 事業所が中核事業を復旧できる状況にあるか確認します。また、パソコンなどの機器の異常や、建物の危険性がないかを確かめ、その後の指示を出す場所を確保します。
- ■周辺地域
- 社外と連絡が取れるか、ライフラインを使える状況かなどを確認します。災害を俯瞰的に把握することが目的です。
- ■取引先の安否
- 自社の損失が少なくても、取引先が甚大な被害を受けていれば事業の復旧が困難になります。
以下の記事では、BCPにおける安否確認について解説しています。あわせて参考にしてください。
3.代替手段による事業継続と復旧活動をする
被害状況を把握し次第、代替手段を用いて事業の継続と復旧を図ります。具体的には建物の修理依頼や経営資源の確保を行います。経営資源の調達方法は取引先や交通の状況などによって変わるため、臨機応変な選択が必要です。
ある程度の初期対応を行ったら、従業員の帰宅時間も考慮しなければなりません。今後どのような方針で対応するのか従業員に周知し、指示を出したうえで帰宅させましょう。
初動対応については、以下の記事で解説しています。
初期対応後に行うべき復旧対応
初期対応を終えた後も、継続的なBCP対応が求められます。状況に応じた復旧活動を段階的に実施し、従業員・顧客・取引先への配慮を欠かさないことが重要です。
従業員への後方支援対応をする
従業員の中には災害によって大きな被害を受けた人もいるでしょう。企業はその従業員の後方支援を行わなければなりません。食糧や仮住居の提供を行いましょう。本人や家族に死傷者が出た場合は、できる限りの配慮が必要です。
一方で、活動できる従業員には積極的に指示を出さなければなりません。常に情報共有し、従業員が円滑に活動できる体制を整えましょう。
顧客や取引先への対応をする
中核事業を復旧するには、顧客や取引先とのやり取りも欠かせません。電話やメールなどのあらゆる手段で連絡を図り、お互いの被害状況を確認して取引調整や取引復元を行いましょう。
取引調整とは、顧客に今後の事業の説明をし、納品物などに関して理解を得ることです。協力会社との連携や代替設備などにより、可能な限り顧客に満足してもらえる体制を整えましょう。
取引復元とは、無事に中核事業が復旧し次第、元の取引体制に戻してもらうことをいいます。
自社の財務対策をする
目先の運転資金に加え、事業復旧のための資金を獲得する必要があります。
資金獲得の手段の1つは損害保険の請求です。総務部は被害状況を元に、必要な修理資金などを算出しましょう。そして、書類を作成して損害保険の請求手続きを行います。また、自治体からの支援金や緊急貸付を受けられる可能性もあります。そのほか、証券等資産の売却などが必要な場合もあるでしょう。
まとめ
BCPは中核事業に被害を受け、緊急な対応が求められる際に発動します。発動条件は企業によって異なりますが、予め条件を設定し広報しておくことで、有事の際に従業員もどう動けばいいのか明確になります。
発動の各フローは担当者を事前に決め、速やかに行動に移すことが大切です。以上を踏まえ、組織で一丸となって対応しましょう。



