磁気テープとは
磁気テープとは、磁性体を塗布したテープ状の記憶媒体で、磁化の変化によってデータを記録する記憶媒体です。もともとオーディオやビデオの録音・録画、コンピュータのデータ保存用途に広く利用されてきました。耐用年数は適切な保管環境下で約20~30年とされています。
データバックアップ用磁気テープとは
データバックアップ用途の磁気テープは、安定したデータ保持と高い耐久性を備えた記録媒体です。媒体が安価なうえに、保管中は電源が不要なためランニングコストも低く抑えられます。加えて、磁気テープの素材である磁性体技術の進化により、大容量のストレージとデータの高速転送を実現し、情報記録装置としての付加価値が高まっています。
磁気テープの仕組み
磁気テープは、磁気ヘッドを使用してデータを記録・再生する仕組みです。記録時には、電気信号が磁気ヘッドを介して磁性体を磁化し、データがテープ上に保存されます。再生時は、同じ磁気ヘッドがその磁化パターンを読み取り、電気信号に変換して元の情報を復元します。
磁気テープの種類(DAT・LTO)
磁気テープのなかでも代表的なものとして DAT(Digital Audio Tape) と LTO(Linear Tape-Open)があります。各種類の特徴を解説します。
| 項目 | DAT(Digital Audio Tape) | LTO(Linear Tape-Open) |
|---|---|---|
| 用途 | デジタルオーディオ録音 データバックアップ | 大容量データの長期保存 データセンターのバックアップ |
| 開発目的 | 高音質なオーディオ録音 | 企業向けのデータバックアップ |
| サイズ | コンパクトなカセット型 | 業務用の大容量カートリッジ型 |
| 記録容量 | 最大80GB(DAT 160) | 最大18TB(LTO-9、非圧縮時) |
| 特徴・利用状況 | 高音質録音が可能で、一時はデータバックアップにも使用されたが、技術の進歩により現在はほぼ廃止 | 大容量・長期保存・低コストが特長で、データセンターや企業のバックアップ用途で利用されている |
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磁気テープが求められる背景
では、なぜ磁気テープが昨今注目されているのか、その背景について解説します。
緊急事態に便利な磁気テープ
東日本大震災では、多くの企業や自治体が重要データの消失や復旧の遅れを経験しました。その教訓からBCP(事業継続計画)の一環として、磁気テープを活用する動きが広がっています。磁気テープは、停電でもデータを保持でき、緊急時の持ち運びや復旧が容易な点が評価されています。また、遠隔地のデータバックアップと併用することで、より安全なバックアップ体制を構築できます。
データセンターにおけるITリソースの効率化
クラウドベンダーなど、巨大なデータを扱う事業者が磁気テープ装置を導入するケースが増えています。磁気テープの「高速・安価・長期保存向き」という特性が、データセンターのアーカイブ用データストレージの代用として適しているからです。このように、適材適所でITリソースを効率的に運用するため、磁気テープが重用されはじめています。
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データバックアップにおける磁気テープのメリット
データバックアップ用途の磁気テープには、大容量保存・低コスト・利便性の高さといったメリットがあります。詳しく見ていきましょう。
HDDよりも大容量

テープの表面には磁性体といわれる粒子状の磁石が塗布されています。素材が従来のメタルなど金属系から、バリウムフェライトという物質をベースにした磁性材料に移行されたことで、磁気テープの記憶容量は大幅に大容量化されました。
特に、データセンターでは大量のデータを長期間保存し、高速に転送する必要があるため、LTO(Linear Tape Open)という標準規格が採用されています。2012年に登場したLTO-6規格では非圧縮で2.5TB、2016年以降に登場したLTO-8では最大12.8TBに達しています。さらに最新のLTO-9では、容量は最大18TBで、圧縮転送速度は最大1,000MB/秒と、より大容量のデータを高速で転送することが可能になりました。
低コストな記録媒体

磁気テープで一度データを記録すれば、HDDのように保存の際に電力を消費する必要はなく、運用中の電力コストは1/6に抑えられると試算されています。
また、低コストで省エネ性能が高いうえに携行性にも優れていることから、長期に渡るデータ保存に適した記録媒体といえます。法令により数年間保管が義務付けられたデータをはじめ、大量の実験データや調査データを扱う企業でも将来のビッグデータ活用を見込んで導入を進めています。
高速なデータ転送と利便性
磁気テープはランダムなアクセスができるデジタル記録媒体と比較すると検索性は劣りますが、データ転送速度には優れています。また停電時でもデータが消失せず、ウイルス感染のリスクを低減できるため、データの長期的な保管用途において高い信頼性を発揮します。
なお、検索性の課題についてはファイルシステム「LTFS」を利用すれば解決します。従来は専用のバックアップソフトウェアでテープからデータを読み出して、ディスク上で利用するという手間がありました。しかし、LTFSならHDDやUSBメモリと同様にファイル単位で直接データを操作できるため、利便性が向上しています。
データバックアップにおける磁気テープのデメリット
磁気テープをデータバックアップとして利用する場合は、以下のデメリットがあるため注意しましょう。
- ■ランダムアクセスができない
- 磁気テープは、データを順番に読み書きする仕組みのため、特定のデータに素早くアクセスできない。必要な情報を探すのに時間がかかり、復元作業に手間がかかる。
- ■保管環境の維持が必要
- 磁気テープは高温多湿や磁気の影響を受けやすく、適切な環境での保管が求められる。専用の保管スペースの確保や管理コストが発生する場合がある。
- ■専用機器と管理作業の負担
- データの読み書きには磁気テープドライブやテープライブラリなどの専用機器が必要。機器の故障時にはデータアクセスが困難なるほか、テープの交換や管理などの作業を手動で行う必要がある。
効率的な運用方法(3-2-1ルールとD2D2T)
磁気テープのデメリットを補い、データ保護を万全にするためには、他の媒体と組み合わせた運用が効果的です。ここでは代表的な運用ルールと構成を紹介します。
データ消失を防ぐ「3-2-1ルール」とは
「3-2-1ルール」は、データ消失リスクを最小限に抑えるための基本的なバックアップの考え方です。
- 3:データを3つ保持する(原本+2つのコピー)。
- 2:コピーは2種類の異なる媒体に保存する(例:HDDと磁気テープ)。
- 1:コピーのうち1つは、別の場所(オフサイト)で保管する。
このルールに則ることで、媒体の故障や災害など、さまざまな脅威からデータを守ることができます。磁気テープは、オフサイト保管用の媒体として非常に適しています。
ディスクとテープを併用するハイブリッド構成
「D2D2T(Disk-to-Disk-to-Tape)」は、HDDと磁気テープを組み合わせた効率的なバックアップ構成です。まず、日々のバックアップは高速なHDDに行い(Disk-to-Disk)、その後、長期保管が必要なデータをHDDから磁気テープへコピーします(Disk-to-Tape)。
この構成により、高速なリストアと、低コストで安全な長期保管という両方のメリットを享受できます。
磁気テープ(LTO)製品の選び方
現在、磁気テープの規格は「LTO(Linear Tape-Open)」が主流です。製品を選ぶ際は、LTOの世代や運用規模に応じた装置を検討しましょう。
LTOの世代(LTO-8/9)と互換性
LTOは数年ごとに新しい世代が登場し、容量や転送速度が向上しています。最新世代はLTO-9で、非圧縮時でも1巻あたり18TBの大容量を誇ります。LTOドライブには世代間の互換性があり、原則として1世代前のテープの読み書き、2世代前のテープの読み取りが可能です。将来のデータ増加を見越して、適切な世代の製品を選びましょう。
オートローダー・ライブラリ装置の有無
バックアップの規模や自動化の要件に応じて、ドライブ装置を選びます。小規模な運用であれば手動でテープを交換するスタンドアロンドライブで十分ですが、データ量が多い場合や運用を効率化したい場合は、複数のテープを自動で交換する「オートローダー」や「テープライブラリ」が適しています。
まとめ
磁気テープは長寿命・低コスト・大容量が特徴のバックアップストレージです。電力不要で長期保存が可能なため、HDDやクラウドストレージと併用することで効率的なデータ管理が実現します。特にLTO規格の磁気テープは、長期保存に適した信頼性の高さから、データセンターや企業のアーカイブで採用されています。
ただし、ランダムアクセスができない・専用機器が必要といった特性もあるため、用途に応じた選択が大切です。目的や運用環境に合ったバックアップ方法を選ぶことで、より効率的なデータ管理が可能になります。各社のバックアップ製品を比較したい方は、以下のボタンから一括資料請求(無料)をご利用ください。


